作成 2007/10/15

[用語]予測市場

英語: prediction market

予測市場は、株式市場のようなマーケットの仕組みを使って将来を予測する仕組みです。

予測市場で会社の行方を占う

予測市場とは、株式市場のような市場システムを用いて将来の出来事を予測するという先物取引のような仕組みです。アメリカでは既にこの仕組みの活用が進んでいて、大統領選挙の結果やアカデミー賞受賞作品を見事に的中させたりといった事例が出始めています。また、企業内でも社員が取引に参加しながら会社の方針決定に利用されるなど、さまざまな活用が行われています。

予測市場はGoogleをどうみるか?

「予測市場」とは、市場メカニズムを通じて将来の事象に関する人々の「総体的」な期待、いいかえれば集団的な予測を抽出する手法である。手法自体は実験経済学で古くから行われてきた仮想市場、人工市場によって確立されたもので、参加者を募って仮想市場における仮想先物の取引を行う。実験経済学では市場構造や投資家行動の分析のためにこれを行うのに対し、予測市場はそこから得られる情報に着目するものである。

Wikipedia(en) Prediction market

Prediction markets are speculative markets created for the purpose of making predictions.



予測市場の例

予測市場の例としてはこんなのがあります。

■アイオワ・エレクトロニック・マーケット(IEM : Iowa Electronic Markets)

アメリカのアイオワ大学ビジネススクールが運営する非営利の先物市場。参加者は、選挙の候補者の得票率に賭ける。IEMの市場価格は、他の多くの世論調査よりも正確な値だったらしい。

参考 Wikipedia(en) Iowa Electronic Markets

■ハリウッド証券取引所(Hollywood Stock Exchange)

映画の興行収入、アカデミー賞の候補者などに賭ける。これまた専門家よりも的中率が高いとか。

参考 Wikipedia(en) Hollywood Stock Exchange

■ベットフェア(Betfair)

イギリスのブックメーカー。インターネット上でスポーツや政治まで様々なジャンルの賭けが行われている。2006年にソフトバンクが資本参加した。法律の都合か日本からは参加できなくなったらしい。

参考 Wikipedia(en) Betfair

■テロ先物市場(Policy Analysis Market)

これは企画倒れになった市場の例。要人暗殺やテロなどの発生に賭ける先物市場。テロリストがテロを行うと同時に利益を得ることができるのではないか、といった批判にあって頓挫した。

参考 Wikipedia(en) Policy Analysis Market


集合知(The Wisdom of Crowds)

予測市場の正確さを見ると、少数の専門家よりも、多数の普通の人の意見の集合が正しいことが多いようです。これは「集合知」というものに関連が深いようです。ジェームズ・スロウィッキーの書籍、「みんなの意見は案外正しい」(原題:The Wisdom of Crowds、読んでないけど)の書籍紹介を引用してみるとこんな感じ。

書籍 「みんなの意見」は案外正しい

人間は集団になると烏合の衆と化し、愚かな行動に走ると言われてきたが、それは違う。一握りの天才や、専門家たちが下す判断よりも、普通の人の普通の集団の判断の方が実は賢い

とは言っても、集団の判断がいつも正しいわけではなく、以下のような条件がつくらしいです。

「集団の知恵」が賢明な判断を下すための4つの要件

1. 多様性 独自の私的情報を持つ個人が、多種存在すること
2. 独立性 各人は、他人の判断を模倣せず、それぞれに結論を出せること
3. 分散性 各人がバラバラであることにより、全体的には視野が広くなること
4. 集約性 個人の判断を集計するメカニズムが存在すること

また上記4項目に含まれるのか分かりませんが、正しい情報にアクセスできないときも、集合知はうまくいかないようです(ってそれは少数の専門家でも同じかな)。

なぜ「みんなの意見」に従うと間違えるのか

予測市場がときとして失敗するのは、まさにこのためだ。たとえば、ブッシュ大統領が連邦最高裁判事に誰を指名するかという予測では、予測市場の成績はきわめて悪かった。
...
「みんな」がなぜこれほど間違ったのかというと、それは彼らが判断を下すための正確な情報をほとんど持っていなかったためだった。これらの「投資家」は、いくら大勢が寄り集まっても、ブッシュ政権内部の動きについてはまったくといっていいほど知らなかったのだ。

つまり、予測市場では、多種多様なトレーダーが自分の頭でモノを考えて金を賭けた結果を合わせたものが、正確な予測になるというわけです。逆に、同じような考えをもつ人ばっかりだったり、人の意見を鵜呑みにする人が多かったり、正しい情報が与えられなかったりすると、予測市場は機能しないわけです。

書籍「投資の科学」の中で、予測市場(書籍ではデシジョン・マーケットと書かれてますが)がうまく機能するための条件として、次のものをあげています。

・自分が何らかの強みを持つと自負している人たちが積極的に参加している
・トレーダーは自分は正しくありたいというインセンティブを持ち、自分以外のわかっていないトレーダーからお金を巻き上げたいと思っている
・リアルタイムで取引が行われ、常にフィードバックが効いている



効率的な株式市場

株式市場には、「正しい株価」といったものは存在しないので、予測市場とはちょっと異なる市場です。ただし予測市場と同じように不特定多数の投資家の売買によって株価が決められます。

「効率的市場仮説」というものがあります。マーケットは常に効率的で、収益機会など(めったに)存在しないという考え方です。効率的な市場も集合値のなせる業かもしれませんが、逆に言うと、効率的でなくなる(収益機会が存在する)場合というのは、上の集合知がよく機能する条件が崩れたとき、ともいえます。例えば、市場は基本、多種多様な考えをもった投資家が売買していますが、バブルや大暴落になると、総楽観、総悲観というように、多様性が失われてしまいます。

参考

書籍「投資の科学

書籍「物語で読み解くデリバティブ入門


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