作成 2007/2/17

ギャンブラーの誤謬

バランス理論という理によって、勝ち続けてきた男がいた。しかし理あるが故に無防備。カイジはそこを突いて勝ちを拾った。

この男の思考
ギャンブルではこういう考えが一番危ない
まさに地獄に直結する道
チョキチョキチョキと来たから
もうチョキがないという読みは
まさに泥沼

「ギャンブラーの誤謬(ごびゅう)」と呼ばれる言葉がある。コイン投げで表、表、表と連続して表が出ると、次は裏が出そうな気がする心理傾向である。実際は何回表が連続して出ようとも、次に表が出る確率は1/2である。なぜなら、コイン投げは、毎回独立事象(前回の結果と次のコイン投げは無関係)だからである。

ではジャンケンの場合はどうだろうか?ジャンケンは人間が手を選んで選択するため、コイン投げのように、完全に独立事象ではなく、前回までの結果が次の手に影響する。特にカイジの限定ジャンケンのように手札に制限がある場合には、チョキチョキチョキと出したならば、次はチョキ以外を出す可能性が高い(カイジはこの考えをバランス理論と呼んだ)。しかし、実際に出す手を決めるのは対戦相手であり、チョキを連続して出した後、(手札にチョキがあれば)さらにチョキを出すこともある。カイジは、"バランス理論で戦っている相手の裏をかく"ことで勝利している。

株にあてはめると、このバランス理論は短期逆張りトレードだろう。下がったところを買って、上がったところを売る。一応理にかなっているようには見えるが、かなりか弱い理で、ダマシはいくらでもある。特に何日も下がったから、次の日は前日より反転確率が高いなんてことはなく、このか弱い理だけで買い下がっていると上の絵の人のように泥沼にはまる。泥沼にはまらないため、この手のか弱い理論に基づいて売買している人は、ロスカットを重視するが、自己中心的なロスカット(自分の買値から何%下がったら売りとか)は何の根拠もない上、ワンパターンなロスカットは踏まれるのがおちである。バランス理論的逆張りは一つの定石とは言えるかもしれないが、参考適度にとどめておくのが吉かもしれない。

表の連続の後は裏が出そうな気がするのが人間の心理である(ギャンブラーの誤謬)。しかし、さらに表が出続けると、今度は考えがいきなり変わって、今後も表が出続けそうな気になってくる。前回の結果と同じ結果が次も続きそうに思える心理傾向は、現状維持バイアスと呼ばれる。いわゆる順張り、トレンドフォローの心理である。

ボックス理論というものがある。前回高値などを上値抵抗ラインと考え、そこを抜ければ株価は上に行き、逆に押し戻されれば下に行くという理論で、参考文献によると以前は機能した方法らしい。これを心理学(行動ファイナンス)で説明すると次のようになる。上値抵抗ラインまでは、「ギャンブラーの誤謬」(逆張り)の心理が働く。抵抗ラインを抜けたところで、この心理が逆転し、今度は「現状維持バイアス」(順張り)の心理になりがぜん強気になる。

この逆張り派、順張り派、その裏をかく派のせめぎ合いで、株価は上に下に動いていく。過去の株価の推移から次の株価を予測するトレードは、ある期間において有効な場合はあるが、結局のところ売り買いするのは人である。裏もかければ、我慢もできるし、ゴリ押しもできる。ある行き過ぎた傾向を見つければ、その歪みを突こうとするのが投機でもある。簡単な判断材料で継続的に儲かればよいが、なかなかそんなうまい話は見つからない株式市場であった。

参考文献

図解でわかる ランダムウォーク&行動ファイナンス理論のすべて

私は株で200万ドル儲けた

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