前に読んだ「まぐれ」の後書きで、マルコム・グラッドウェルという名前が出てきて、ぐぐって見つけた本が面白そうだったので買ってみた(このマルコムさんが、言及されたマルコムさんと同一人物かどうかは知らない)。
アイデアや流行が突然爆発的に広がることがあるが、その劇的瞬間のことを「ティッピング・ポイント」と呼ぶらしい。過去のいくつかの爆発的流行を調べて、ティッピング・ポイントが発生するときに共通する3つの原則(以下)が説明されていた。
流行が広まるには、コネクター(媒介者)と呼ばれる人が重要らしい。コネクターは友達作りが人一倍うまく、知り合いの数も人一倍多い人。「友達の友達をたどれば、たった6人で全世界へつながる」とかいうスモールワールドとかいう言葉があるが、そのとき辿る6人は、このコネクターという人たちに集中している。コネクターはネットワーク機器で言うところのハブのようなものである(他のネットワークとつながるという意味ではルータ)。
コネクターの人の特徴の描かれ方がちょっとめずらしかった。「たとえ何もしゃべらなくても、波長のようなもので近くにいる他人を影響できる」って、何その超能力って感じ。しかもそれは生まれ持った才能だとか。で、コネクターは「他の人の役にたつことをするのが心底からうれしい」とか。もちろん、コネクターは多くの人と友達でいられるぐらいだから、当然いいやつ、好かれるキャラではあるだろうが、ちょっとヨイショしすぎだろと思った。世の中、名詞は多いが影響力0とか、人脈を金脈に変えるプロのマルチの親玉のような、似非コネクターもいっぱいいるでしょ。ポートだけ多くて通信品質の悪いルータとか、後でウィルスが送られてくるトロイの木馬ルータみたいなのは困りますよ。
あと、流行には、コネクターの他に、通の人メイベン、説得がうまいセールスマンという役割の人も必要とか。メイベンって通って意味だったのか、と今更知った。
流行するにはアイデアや商品自体、長くが記憶に残るような「粘り」が大事と。「セサミー・ストリート」や「ブルーズ・クルーズ」などの子供番組が、とても考えられて作られているという話が面白かった。
流行が広まるには、モノ自体、媒介者でない、その他の環境やコンテキストも重要。地下鉄の壁の落書き消して犯罪率が減ったって話があったけど、何だかよくわからない。増員した警備員の数とか、微罪で潜在的な重犯罪者を多数捕獲して犯罪者候補の数がへったので、結果的に犯罪率が減ったのでわ?スローガンとか1つの作戦として落書き消したり、窓ガラス直すのはいいと思うけど、単に落書きがないことで直接的に犯罪が減るとか、暴論というかオカルトな気がするけど。昔読んだヤバい経済学では、NYの犯罪率が減った最大の要因は、妊娠中絶の合法化により、望まれずに生まれるDQNっ子が減ったためだと言ってたけど、そっちの方が因果関係としては面白い説だったな。
様々なエピソードもあり面白い本だったが、「小さなコストで、大きな流れを作り出すことができる」、「ティッピングポイントをちょっと一押しすれば世界が動く」的なノリにするためか、やや都合のいい話と解釈も多いかとも思った。コネクターやメイベンに商品を宣伝してもらえば、そりゃ流行るだろうけど、まず使ってもらうには、モノ自体がキャッチーでないといかんだろうし、あるいは既にそれなりの関係を築いているか、それなりの代償(広告費)を出すしかないだろう。
粘りの要素のセサミー・ストリートだって、相当な労力かけてるし、背景の力の地下鉄犯罪撲滅だって、相当なコストかけてますよ。バタフライ効果みたいな、小さな力で世界が動く的なことはあると思うけど、それを予測するとか、そのスイッチに"気付く"のはとても難しい気がする。
あと、この本は口コミマーケッティングの本?みたいだが、「急に売れ始めるのにはわけがある」→「株が急に値上がりするのにはわけがある」と置き換えれば、株式トレードにも応用できるかもしれない。突然株価が吹き上がる/暴落するある閾値、ティッピングポイントを見極めることができるができれば。。。ある株式テーマで銘柄群が突然人気化する仕組みはどういうものか?その仕組みがわかり、そして予測ができれば。。。
2008/3/20