HOME株本れびゅ2007年ヤバい経済学
ヤバい経済学 ─悪ガキ教授が世の裏側を探検する
スティーヴン・レヴィット スティーヴン・ダブナー 望月 衛
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感想:インチキ経済学(インチキをテーマにした経済学)

アメリカでベストセラーになって日本でも有名になった本。題名にヤバイとついているのはダブーに触れるような話題が多いためみたい。経済学というよりは、もうちょっとあいまいな社会学みたいな感じだが。

人はインセンティブで動くもんで、専門家といわれる人たちの中には、情報格差を利用して、素人をカモって金儲けをしている人もあれこれとか。「アナリストは...」「証券マンは...」「商材業者は...」と置き換えていろいろ思ってみるのもよいかも。

以下、本の中で面白かった話。

相撲の八百長の話

過去のデータを統計的に分析すると、「7戦7勝」の力士 vs 「8勝6負」の力士の対戦では、前者の勝率が79.6%に上るらしい。統計的に前者の方が明らかに勝率が高い。相撲は勝ち越しと負け越しで来場所の番付が決まるから、前者の力士の方の星一つの重要性が非常に高い。カイジのジャンケンの星2つみたいなもんだな。

著者は数字は嫌いと言ってたのに統計来ました。これはなかなか説得力があるのでは。しかしアメリカ人なんだから野球とかアメフトでもすればいいのに、なぜか相撲。。。

ベーグルの話

ポール・フェルドマンという人が、ベーグルの良心市販売(無人で代金を入れて販売する商売)を、いろんな会社でやった回収率についての話。最初自分の職場でやったときは回収率は95%、他社では80%〜90%だとか。で、大会社の方が回収率が悪いとか、ある種の祝日の方が回収率が悪いとか。

ちょっと前にTVで高校かどっかで、無人のパンか何かの販売で100%じゃなかったので、女子高生が泣きながらお金を入れてくださいとか校内放送とかしてたのがあったのを思い出した。9割が正直者という現実を素晴らしいと思うべきで100%なんて作り物の世界だよな。

子どもにつける名前の話

過去の名前のデータの変遷を調べてみると、プアな集団の親が子どもにつける名前は、今、リッチな集団で多い名前をつけることが多いらしい。意識して、ヒルズ族っぽい名前をつける親はいないでしょうが、無意識に子どもに成功してほしい、幸せになって欲しいと思う心がそうさせるのか。で、同じようなリッチ風の名前の子どもが増えて、子どもが親になるくらいにはその名前は、リッチ風ではなく、ありふれた名前になってると。

ちょっと前に別の本で読んだ、ファッションも、セレブーな人たちの流行を、一般人が真似するという流れが延々とつづいてるというような話を思い出した。無意識の上昇志向みたいなもんか。

兄貴に「勝ち馬(ウィナー)」、弟に「負け犬(ルーザー)」とか付けたヤケクソな父親(実話?)の話は笑った。日本だと、お上の圧力で却下されそうだが。


なかなか面白い本で、イッキに読みました。でも、これ読んで、そのまま書いてあることを信じて他の人に垂れ流す(きっこ流)のもまた危険ですよ。この本が面白いのは、感情に訴えるようなダブーに切り込んでいるところがあるからで、また一味違った視点や主張が書かれているからです。痛快な話っていうのは面白いけど、たいていは特殊な条件の極論だったり、ウソの材料が使われてたりしますから(この本はまっとうそうに見えますが)。雑学の知恵ぐらいならいいけど、仕事や人生の判断材料で使うには自分で裏を取る、せめて信頼できる他人の判断を聞くことが大事かも。

2007/6/21