作成 2008/1/5

証券税制メモ

証券税制についてちょっと調べてみたメモ。税金なんて全く詳しくない私がちょっと調べただけで書いておりますので、ウソがある可能性もけっこうあるかも。

証券税制の変遷

日本の株式の売買にかかる税金制度は以下のように変わってきました。

表、株式譲渡益課税の制度の変遷
西暦 和暦         株式譲渡益課税        
1937 昭和12   ・有価証券移転税
1950 昭和25   ・シャウプ勧告のもと、有価証券移転税を廃止し総合課税
1953 昭和28 1 ・総合課税→原則非課税(ただし売買回数、株数多などの条件で総合課税)
・有価証券取引税の導入
1989 平成1 3 ・原則非課税→課税化
  申告分離(譲渡益×26%)
  源泉分離(売買代金×1.05%)
1999 平成11   ・有価証券取引税の廃止
「源泉分離課税」廃止し、「申告分離課税」へ一本化決定
・申告分離課税の税率引き下げ(26%→20%)
2001 平成13 4 ・「申告分離」一本化の当初予定(証券界の反対で2年延期)
2003 平成15 1 ・「申告分離」へ一本化
・定率減税の導入(20%→10%)
2007 平成19 12 ・定率減税廃止の1年延長(2008→2009)を決定

参考
財務省 株式等譲渡益課税制度の沿革
NSJ日本証券新聞 軽減税率存続を!!
入門財政 資産課税

原則非課税の時代

1989年ごろまで、株の売買益は原則非課税でした。1950年にシャウプ勧告により総合課税として課税された時期もありましたが、うまくいかなかったらしく、3年で制度は廃止されたそうです。

納税者番号制度の導入と金融所得課税 金融所得課税の経緯
http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/issue/0475.pdf

シャウプ税制においては、包括的所得税の考え方に基づき、利子所得、株式譲渡益を含むすべての所得を厳密に総合課税の対象とした。
...
株式譲渡益は戦前から非課税であったが、シャウプ勧告によって初めて株式譲渡益課税が導入された。しかし、株式譲渡益課税は、徴税技術上の問題、資本市場の育成の観点、税収が少ない等の理由から、実施後わずか3年で廃止され、株式譲渡益課税の代わりに有価証券取引税が導入されることとなった。

ただし、原則非課税とは言っても、回数や株数の多い場合は、申告が必要で総合課税になったそうです。特に売買回数が多い人や大口投資家には高くつく税金だったようで、例えば是川銀蔵さんは、住友鉱山での儲けをほとんど税金でもっていかれたとか(昔は所得税の最高税率も高かった。関連1 2)。

また、有価証券取引税という税金もありました(いくらか知らないけど何万分の1とか?)。また配当は別に課税されたので、原則非課税とは言っても、全く株の税金を払わくてよかったということでもありません。

申告分離、源泉分離の選択方式

バブルに浮かれた1989年、原則非課税から課税化されることになりました。課税方式は、以下の2つからの選択方式です。

「申告分離」は確定申告が必要な方式で、「源泉分離」は自動的に源泉徴収される(申告不要の)方式です。それぞれで、税金のかかり方が異なりました。「申告分離」は現在の方式と同じ譲渡益にかかる税金で、税率は26%でした。「源泉分離」では、有価証券取引税と同じ売買代金に応じてかかる税金で、税率は売買代金の1.05%でした。なお、「分離」とあるように、どちらも総合課税でなく、分離課税です。投機的な売買を行う人(回数、代金が多い)は高い税率ですが、買って寝かしとくだけの人には今と比べてもかなりの低税率でした。

申告分離課税一本化

選択方式は不公平だし節税ができすぎだとかで(?)、選択方式は廃止され、申告分離に一本化されることになりました。また売買代金に応じた税率というのは、諸外国にも評判がよろしくないらしく、源泉分離の廃止とともに、有価証券取引税も廃止されます。一本化は、当初2001年施行の予定でしたが、反対もあり2003年に延期されて施行されました。

また、1999年に申告分離課税の税率が26%→20%に引き下げられました。この20%というのが、後の低率減税導入前の、低率じゃない普通の税率ということになります。そして2003年に、低率減税が導入され、20%→10%に引き下げられました。この10%というのが現行の税率です。

証券税率の国際比較

金融庁の平成20年度 税制改正要望項目には、各国の税率の国際比較の表がのっています。それを見ると、現在の日本の株式譲渡益の税率10%という数字は、欧米諸国(アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス)より安いように見えます。

表 国際比較1(税制改正要望項目より)

一方、アジア圏の国々と比較した表もあって、それを見ると、現在の日本の株式譲渡益の税率10%という数字は、アジア諸国(中国、香港、シンガポール、韓国)より高いように見えます。

表 国際比較2(税制改正要望項目より)

その他 参考
税制調査会 諸外国の税制との比較
図録 税収の国際比較

日本の株式譲渡益10%というのは、高い国と比べれば高いし、低い国と比べれば高いようです。高い国でもいろんな優遇措置もあったりして、一概に高いとも言えないし、国によってもともと税金多い(かわりにサービスも手厚い)とか、課税方針の違い(総合課税中心とか)とか、いろいろあるようです。低率減税の行方も気になりますが、まぁフェアと思えるような税制にしてほしいもんです。


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