株とギャンブルについて、科学者たちがどのように挑戦してきたかをなんだか細かく書いた本。かなり多数の登場人物がいるが、中心となるのは、次のシャノン、ソープ、ケリーの3人。
booleanをコンピュータに適用し、世界最初か2番目くらいのプログラマーで、暗号とかエントロピーとかした人。あまり知られてないが、ギャンブルと株式投資にも情熱を燃やした人だったらしく、本ではそのことについて深く掘り下げている。本人が実際に行った投資は有望なテクノロジー株のバイ&ホールド。
一般にはカード・カウンティングの祖として有名。数学者出身ながら、ギャンブル、株式市場と身を移す。オプションの適正価格計算、CBアーブ、ロングショート、スタッドアーブなどを使って実際にファンドを運用。株式市場の中にエッジ(有利さ)を見つける天才とか。効率的市場仮説に対して曰く↓
「問題は市場が効率的かどうか」ではなく、「市場はどの程度、非効率的か」「そこにどうやってつけこむか」だ。
「エッジ/オッズ」、「Gmax=R」であらわされる俗にケリーの法則と言われる理論を発表。ケリーのギャンブルに関連する発表はそれだけで、上の2人と違って自身投機は行わなかったが、この法則は、叩かれたり、引用されたり、πや黄金分割と並び、その後数学の世界を抜け出る(一般受けもする)理論となる。
いろんな人が出てくる。もちろんサミュエルソン、マートン、マーコウィッツなど経済学方面の有名人も出てくるが、LTCMなどのわりと有名な話に比べて、シャノンとソープの話なんてほとんど聞かないから(ソープはギャンブラーとして有名だが生い立ちとかファンド運用とかの話)、そのあたりこの本の魅力だと思う。本の前半で、シャノンとソープが家の地下室でルーレットの玉の落下点の予測を、カメラで撮影したり計算したりする話が出てくる。自分としてはルーレットに必勝法なんてあるはずがないと思っていたが、半周にでも落下点を絞りこめばエッジは現実的になり、さらにルーレットに少しでも傾きがあればがぜん有利になるかもしれないらしい。冗談で氷でも挟むかと言ったりして。。。ルーレット攻略法は結局成功しなかったが、一見不可能と思えることに優秀な数学者たちが脳みそ使って情熱をそそいでいる姿(しかも本業じゃない)が少し感動的だった。
一応、ケリーの法則を中心に、資金管理の話がこの本のメインテーマだと思われるが、その部分はいまいちよくわからなかった。算術平均と幾何学平均の違いとか、分散されてるとかしてないとか、レバレッジがどのくらいがとか別にどうでもいいじゃんとか。。。本当はよくないんだろうが。
サンクトペテルブルクの賭けとか、永福マスターファンドの破綻とか、知らない話もいろいろでてきて面白い。ギャングの抗争の話とか、ケリー理論に対する学術論争の話が延々と細かく描写されてるのは、読んでてやや眠かった。
2007/4/8
BOOK DESIGN(装丁者による紹介)