HOME株本れびゅ2006年ネット株の心理学
ネット株の心理学
小幡 績
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感想:デイトレの理論武装 ★★★★★

学者先生?にしてはめずらしく短期売買、デイトレを支持している。短期売買の本の多くは、商売のためのツールだったり、夢を売る素人騙しだったりするのだが、この本はなかなか理知的な感じでよい。

株式分割やIPOなどのバブルについての記述はなかなか面白い。ハウツー本ではないので、具体的なトレード方法が書かれているわけではないが、出口戦略(誰に売るか?=誰が後で買ってくれるの)の重要性、優位性を考えること(業績予想や情報の早さでは機関投資家に分がある。他の投資家の心理的な反応と行動の予測を考えた方がよいかも)などは、自分のトレード計画の指針として有用だと思う。また、最後の方で株式投資とゼロサムゲームについての記述があるが、なかなかよくまとまっている。飲み屋などで長期投資マンセー親父と口喧嘩するときの理論武装として役立つかもしれない。

逆に、ちょっと気にかかっとところとしてはこんなの。デイトレを資金効率とリスク管理の点から優れたトレード方法としているが、「努力すれば特殊な才能がなくても実現できる可能性がある」などの記述を見ると、ゼロサムゲームをやや甘く見ている感じもした。株のゼロサムゲームは100人いたら50人が儲けて50人が損という世界ではなく、恐らく現状、10人が90%の利益を出し、他の90人は損というような世界ではないかなと思う。あと分割後のバリュークリックを30倍の値段で買った人が、最も賢い投機家だという話があったが、シーマの例や、ちょっと前のIPOなどを見ていると、期待リターンがプラスかどうかやや疑問で、「バブルに突っ込むのは投資の王道」とばかりも言ってられないかなと思った。

デイトレをお客とするデイトレは、つまるところ、デイトレ同士の食い合いで、恒常的に利益を上げていくのはカモが恒常的に参入してくれない限り難しそうだ。やはり、他の大口投資家をお客さんにするのが、正しい(比較的生き残れそうな)短期売買の方法かもなーと思った。

2006/6/29レビュー