HOME株本れびゅ2008年まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか
ナシーム・ニコラス・タレブ
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感想:へんくつだな

相場は運の要素が大きい。

トレードで大もうけしたからといって、その人に能力があったのかどうかは分からない。その人の手法(運用方法)が、たまたまその時期の相場に合っただけかもしれない。ていうか、たいていそれ。例えばバブリーな地合がいいときに、暴落時につっこみ買いして吹いたら売る、というやり方を繰り返して、大もうけしたとする。で、地合が変わって、同じやり方をやってたら、あっさり儲けが吹っ飛びましたと。それは、その人にトレードセンスがあったとか恐怖に耐える強い心があったとかでなく、たまたま地合と手法が合っただけ、まぐれだったのですね。

感覚的なものでトレードせず、統計的に検証して、ルールに従ってトレードで大もうけしたからといって、その人に能力があったのかどうかは分からない。相場では、統計上ありえないようなマレなことでも起こりうる。今まで何万羽の白鳥を見て全て白かったとしても、次に見る白鳥は黒いかもしれない。統計的方法で相場をはっている人、常にふっとぶリスクをかかえている。ニーダフォッファーだってふっとんだじゃないかと。著者的には帰納的方法を相場に適用するのは完全否定の模様。

というような話も、もうちょっと具体例をもとにありの、トレード以外の、哲学的な話もありの、幅広い話題についてのエッセイのような本でした。なかなか面白かったです。ただ、じゃあ、まぐれでない人ってどんなの?というのがちょっと分からなかったけど。著者のタレブはオプションの買いのみでファンドを運用しているそうですが、いったいどんなやり方してるんだろう。

あと、毒舌が著者の持ち味のようですが、「俺はドクター様だぜ、MBAごときがうんちく語ってんじゃねーよ」「マスコミはキライだ。ゴミ情報ばっか垂れ流してんじゃねーよ」とか、やや、へんくつおじさんだなーと感じるような文章もあちこち。あと、次回作のブラックスワンも翻訳中らしいので、これも期待です。

リンク

タレブのページ(顔あり)
http://www.fooledbyrandomness.com/

原書(Wikipedia)
http://en.wikipedia.org/wiki/Fooled_by_Randomness

原書(Amazon)
Fooled by Randomness: The Hidden Role of Chance in Life and in the Markets
http://www.amazon.com/dp/0812975219/

次回作(Amazon)
The Black Swan: The Impact of the Highly Improbable
http://www.amazon.com/dp/1400063515/

2008/3/6