HOME株本れびゅ2007年人間この信じやすきもの
人間この信じやすきもの―迷信・誤信はどうして生まれるか
トーマス ギロビッチ Thomas Gilovich 守 一雄
4788504480

感想:インチキ投資法が売れる理由

認知心理学を一般向けに書いた本。情報を正しく判断するため、人付き合いのために役に立つ。面白かった話は情報の非対象性の話。しばらく会ってなかったAさんのことを考えてたらAさんから電話があったとか。そういう虫の知らせ、予知夢などはたいてい、これで説明がつく。あと、エイズやドラッグの広告で危険を過大に伝えてきたのは、古い性道徳を持つ人たちのプロパカンダだという話。正しくなくてもやめてくれればいいやと思う政府、スリリングな話の方がおもろいというマスコミなども合わさって、情報が歪められて伝えられる。

株をやってる人間は、戦術をもつべきだと思うが、誤った戦術を持たないために、こういう本は一つ読んでおいてもいいかもしれない。例えば、あるチャート分析があり、それが全く役に立たないものだとしても、そのチャート分析でも信じる人はいるのはなぜだろう?というのがこの本を読んでよくわかる。これまでも行動ファイナンス系の投資本などでそのあたりの話も解説されていたが、この本が一番詳しい気がする。例えば、銘柄に惚れて買いポジを取ってしまうと、株が上がる理由を探してしまい、掲示板で上がる上がる言ってる連中とつるんで、上がらない理由は無視してしまう。というような話はいろいろな本でよく見た。だが、人は、上がらない理由を視界から消すのでなく、むしろ逆で、反対意見があればそれには時間をかけて目を通す性質があるらしい。そして反対意見が正しくないこと、穴を探し穴を見つけたら安心する。よほど完全な反対意見でないと、取り入れられない。

ところで、科学的には「統制のとれた実験で結果を出してないものは証明されたものではない」が、私たちの仕事は証明することではないし、証明することが難しいこともある。投資の目的は儲けることで、投資戦術を証明することではない。そもそも証明のために回数をこなすのも難しいし、様々な要因がありすぎる。本を売ったり、ファンドでも立ち上げるのでもなければ、なんとか投資法を証明しようとは思わないが、間違えた考えに固執しないようにはしたい。

本を読み終えてみて、一つの課題が残る。自分では血液型占いや超能力やトンデモ健康法は信じないとする。でも、それを信じてる人に出会ったらどうすべきか?えーB型じゃないのー?とか他愛もない話をする女の子に、イチイチ突込みを入れていても無粋かもしれない。明らかに有害な体を害する健康食品や詐欺以外はほっておくのが吉でしょうか。でもって、やはり相変わらずTVでは超能力捜査官とか占い師のズバッと言うわよなどが、視聴者が求めているから、面白いからという理由で放映されつづけるわけです。

2007/4/20