世界のメジャーな宗教がお金に対してどのようなことを言っているかを書いた本。世界4大宗教の成りたちが簡潔によくわかる。手塚治の漫画とメルギブソン作の痛いだけ?の映画を見たぐらいの知識しかない私には勉強になった。
宗教のドグマ(教義)が出来た時代背景、理由、都合について書いているのがよいと思った。例えば、ほとんどの宗教では「高利貸しは禁止」なのですが、それは当然、当時から高利貸しが社会問題化してたから禁止に盛り込まれたんだと。教徒にとってはドグマに理由なんてない「神さまが言ったから」なんですが、宗教が人々に受け入れられるためには、人々の道徳や価値観にあうものでないといけないわけで、さらに熱心な支持を得るには、人々の不満を盛り込んでみたり、隣国に攻めたい王族に根拠を与えたりするわけです。貨幣経済が発達してくると「金利を取るのは禁止」は現実的に難しく、低金利ならいい、異教徒相手ならいい、手数料ならいい、リースや分割ならいい、とか各宗教あの手この手で教義の解釈をしてきたようです。
ユダヤ教の迫害の歴史があちこちできてきた。キリスト教の話になっても、イスラム教の話になっても、資本論のマルクスにまで差別されてるし。ヒットラーを持ち出すまでもなく、特定の人を差別して、その他大勢の支持を得るという方法は古今東西あちこちで使われてきた。特定の人は明らかな弱者集団(戦争に負けて奴隷にされた人とか)を対象にする他に、評判のイマイチな金持ち連中を狙うのも都合がいい。奴隷は労働力になってもらうしかないが、悪人金持ちは金もってるから、それ分捕れますから。分捕った分をみんなで分配することで、支持も得られるし経済も豊かになるし一石二鳥です。少し前に、サラ金会社へのプチ徳政令がありました。これは借金に苦しむ人、多重債務者を省みなかった業界全体への報いとも言えますが、しかし、この構図を安易にあっちこっちに使われるようになると、また怖い世界がやってくるのかもなぁとか思った。
あと、さすが流行る宗教は教典のセリフも趣が深い。ちょっと気になった名言をメモしておこう。
ユダヤ教の聖書の解説書「タルムード」の一部
「金は善人によいことをさせ、悪人に悪いことをさせる」
「金は無慈悲な主人であるが、同時にこれほど優れた召使いもいない」
イスラム教。当時のアラブ商人たちの心のすさみ、金銭への執着ぐあいを言った言葉
「ええ、呪われろ、よるとさわると他人の陰口、宝を山と貯めこんで、暇さえあれば銭勘定」
「はてさて人間は不遜なもの、おのれ一人で他人はいらぬと思い込む」
日本の仏教について著者のコメント(他の宗教に比べポリシーない上に商売毛多くて嫌いらしい)
今の日本の仏教は葬式仏教だと批判されている。仏教そのものを伝えようとしている僧侶もいるにはいるが、大半の寺院や僧侶は葬式や法事などの行事を中心に非課税の商売をしている。