築地の卸業者「内藤」の主、上田武司氏が語るマグロをめぐる一冊。世界中のマグロの分布や、世界から日本に送られてくるマグロ事情の変遷も書いた、まさに"マグロ"経済学。各地のマグロを釣る方法(中には養殖も)やら、築地でのセリのやり方など、普段全く知ることのない世界の話が書かれていて面白い。
中でも大間のマグロ漁師の話が面白かった。最近ドラマ(見てないけど)のモデルにもなった大間のマグロ漁師は、一本釣りという漁法でマグロを釣る。冷たい海、男一人小船に乗り、自分の体重の何倍ものマグロと格闘し、勝利すれば大金が手に入る。なんだかそれは男のロマン。
大間のマグロの一本釣りをする漁師でもよく釣れる人とそうでない人がいるらしい。大間のマグロは大物が釣れると一匹数百万の値が付くので、数匹釣れれば生計が成り立つ。釣れた人はその収入で魚群探知機を買って、さらに釣れる確率を増やせる。そうでない人はなかなか釣れない。年に一匹も釣れないこともあり、イカなど他の漁をするか借金をしてなんとか食いつなぐ。機械を使わなくても名人と言われる人もいて、マグロのエサを食べる沖の鳥、イカやシャチ、海流の変わり目など、そういうヒントを見つけてのマグロの居場所の予測がうまいらしい。ちなみに、一本釣りしている漁師同士に同時にあたりがきたのに、お互いの糸がからまってしまう「お祭り」と言う状況になることがあるらしいが、その際お互い糸をはなすことは絶対にないらしい。なんせ年に何匹も釣れないんだから。
ちなみに著者の上田さんはマグロや事業については、なかなか面白い意見を言い、アクティブに行動をしてきたが、投資についてはとたんに否定的になる。本の主題とは全く関係ない一文だがこんなことを言っていた。まぁ、職人的なモノの見方なのかな。
汗水たらさずに金を儲けようと思う方が間違いじゃないですかね。だいたい、そんなうまい話は、そうはないですから。私ときたら、どんなに景気がよくたって、朝三時には起きて、四時には築地に入ってるような生活をしていましたから、金が金を生むなんてことはあり得ないって、わかりますからね。
しょうもないことをあえて言えば、そんなうまい話は当然ないし、知恵を絞らず努力もせずに平均以上に資産を増やすことなんてできませんから。
2007/2/2