感想:行動ファイナンスの入門に ★★★
金融工学の考え方に、「効率的市場仮説」という考え方があります。効率的市場仮説では、市場は常に合理的で、一時的なゆらぎはあっても、すぐに適正な価格に収束していくと言われています。また、すぐに価格は合理的に収束してしまっているので、明日の価格が上がるか下がるかというのは予測できず、ランダムに動く(ランダム・ウォーク)、そして価格帯は釣鐘上の正規分布になるといわれています。
この考え方は、バリュー投資や裁定取引(アービトラージャ)といった手法の論理的根拠となる考え方です(ちがうかも?)。しかし、市場は必ずしも合理的に動くとは限らず、特に、短期の価格変動や、株式といった判断材料が多岐にわたる市場では、「プレイヤーが合理的にふるまわないことが多い」ようで、効果的市場仮説で説明できない価格変動が起きます。例えば、正規分布で考えると、100年に1度の確率の価格変動がしばしば(例外値と言い切れるほど少ない割合でもなく)現われたり、売りや買いの正のフィードバックがトレンドを作り出したりと。
なぜ合理的な価格にならないかというと、市場参加者の人間個々人が、不合理な判断をくだすためです。「行動ファイナンス理論」では、不合理な人間の心理学的側面に注目し、価格変動を説明します。この考え方により、トレンドや波動、いきすぎといった価格変動も説明可能なようです。
この書籍は「行動ファイナンス」の入門書で、難しい計算式は抜きにして、わかりやすく説明されています。また、筆者が長年、株のディーリングを行っていたこともあり、株の話題が説明として多く用いられており、理解しやすいです。さすがに入門書なので、これを読んで悟りが開けるわけではなさそうですが、行動ファイナンスという概念を学ぶための出発点としていい感じだと思いました。
2004/12/27レビュー 転載