作成 2007/7/21

[用語]ポンジー・スキーム

英語 Ponzi Scheme

ポンジースキームはアメリカ版のねずみ講のことで、20世紀はじめの天才的詐欺師チャールズ・ポンジー(Charles Ponzi)から名前が来ています。

「国際郵便返信用クーポン」裁定取引

チャールズ・ポンジーは、「国際郵便返信用クーポン」が国によって値段が違うことに目をつけました。安い国で買って、高い国で売れば、儲けることができるのではないか?今で言うところの制度の歪みをついた裁定取引のようなものでしょうか。実際これでコツコツと儲けることもできたのかもしれませんが、ポンジーさんのすごいところは、この取引自体を行う会社を作って投資家からの資金を募ったところです。

驚異的利回りの事業会社

この事業では、「3ヶ月で50%の利益を保証」といった、無茶苦茶高利回りの収益を約束して、出資者をつのりました。ポンジーさんの事業は一躍有名になり、出資者は次から次に集まってきました。ポンジーさんは大儲けし、その資金をもとに他の貿易商社、映画館チェーン、銀行グループなども買収し、経営に乗り出しました。

このあたりで、地元のボストン・ポスト誌からつっこみが入りました。「収益から考えるとポンジーさんが買ったとされる国際返信用クーポンの量を全世界に存在するクーポンを超えている。これは怪しい」。クーポンの裁定はたしかに、少人数がこっそり小額でやる分には儲けが出そうなものでしたが、冷静に考えると、こんな大々的にやって儲かるはずはありません。郵便局はそんなに切手を現金化してくれないし、制度も変わってしまうでしょうでしょう。

しかしポンジーさんは負けません。「実は自分は、全く別のある方法で金を増やしているんです。これは驚嘆すべき方法なんだが、もうしばらくは当社だけの独占にしておきたいんで、今その秘密は明かせない。。。」。つまり国際郵便返信用クーポンは最初の事業の一つなだけであって、実は本名の事業は他にあるというのです。実際、既に儲けてる投資家もたくさんいましたし、みんなポンジーさんの甘い話を信じてしまいました。

スキームの破綻

だが、しかしポンジーさんの化けの皮は剥がれていきます。地方検索当局の調べが入り、検査が終わるまでは新資金の募集ができないことになってしまいました。しかしそれぐらいではポンジーさんはへこたれません。銀行から借りたりして、利益の支払いはこなしました。ポンジーさんは自分の儲けは「この世のために」使う予定だと発表し、集まった群衆の拍手喝さいを受けました。まだまだファンの間でポンジーさんの人気は絶大でした。

しかし、最終的にはポンジーさんは逮捕されてしまいました。ポンジーさんの会社がやっていたことは、新規の投資家からの資金を、古い投資家の収益にまわしていただけであることが、明るみに出ました。「国際郵便返信用クーポン」にしたって、実際にやったのは最初の30ドルだけで、あとは全く無関係。実際会社の内情は大赤字で、事業で利益を出していたのではなく、顧客の資金を流量しながら自転車操業し、儲かっている振りしていただけだったそうです。新規の投資家が無限に増えていくのでなければ、必ずどこかで破綻する仕組みでした。

参考

金融イソップ物語

米国版ねずみ講、ポンジーのゲーム

Wikipedia(en) Charles Ponzi Ponzi Scheme

ポンジー講と仕手株

ポンジー講と仕手株は似た部分があると思います。

仕手株は、まず仕手の人が株を大量に底値で拾います。次にいっきに買い上げます。空売りをさそったり、激しい動きをしながら、株価をどんどん吊り上げていきます。提灯もたくさんついていきます。インチキ投資顧問とも協力し、各地で買い煽ります。最初の方で買った人や、途中で買って既に売った人の中には儲けた人もいるでしょう。そういう人たちがまた儲けたことを自慢したりもします。この値動きは怖いと思いながらも、「短期間にすごく儲けることができるに違いない」という欲に負けて、すでにかなり値上がりしている株に飛び乗ります。そして、インチキ上げした暴騰株はどこかで頂上になり、最後につかんだ人が、それまでに売った人の利益を払うことになります。

なんとなく仕手株に例えましたが、大型優良株とかでも同じ構図があてはまります。特定の仕手のような人はいないかもしれませんが、複数のファンドマネージャーが、ファンドに入ってくる資金を使って、株をひたすら買い上げていきます。彼らもいつか誰かはババを引くということは分かっているかもしれません。しかし、例えばハイウォーターマークなどの報酬制度や、他のファンドマネージャーよりいい成績を出さねばいけないという競走意識、損しても別に俺の金じゃないしといったモラルの低さ、などがあわさり、高値の株をさらに買い上げていきます。

以上は「事実や証拠のない妄想」です。でも、他のもろもろの要因を考えずに、トレンドフォロー最強とか言っている人、さらに儲かると信じて全財産を賭けてしまうような人は、ポンジーさんの絶好のお客さんです。株式市場は投資家(正直者)と投機化(詐欺師)が適度に混在してちょうどいい具合ですが、たまに投機化が異常繁殖して、異常な値動きになることもあります。異常な値動きは、ある人にとっては、無視すべき危険であり、別の人にとっては、絶好のチャンスでもあります。そして、「株でキャピタルゲインを得る」ということを考える場合、「ここからさらに買う人がいるかどうか」を冷静に判断することはとても重要だと思います。


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